絵本のある暮らしに憧れていたら、いつのまにかたくさんの書物に囲まれていました。


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ゼバスチアンからの電話

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ゼバスチアンからの電話
イリーナ・コリュシュノフ作

石川素子
吉原高志共訳
福武出版



この本が私の手もとにやってくるのは2度目。
1度目の本は誰かの手もとにあるのだと思う。

わたしも、つい誰に貸したのかを忘れてしまった。
文庫をやりはじめるずっと前の話。

トムの庭に行ったら、入荷してたからすぐに連れ帰った。

なんというんだろう。
静かなようで、ちっとも冷静でいられない恋愛がここにある。

大人の想像を越えている若者の恋がここにある。
でも、それはどこまでいっても当事者の若者の目線。
大人は時として、わかっていても知らぬふりをして
話をしていることがたくさんあるのだから。

娘の恋愛の危うい時に起きた家の引越。
念願の広くて安心して家族が住める郊外の家。
実際は車がないとどこにも行けないような不便な家。

不幸というのは、本当にちいさなきっかけで生まれる。
でも、不幸が不幸を呼んで、お涙ちょうだいになるドラマは
いつもどこか安っぽい。

おばあちゃんから譲り受けた大事な形見のビーダーマイヤーの家具。
その所有者の主人公のザビーネ。
ザビーネの恋人ゼバスチアン。
そしてその家族。

わたしはいつもこのものがたりを再読する度に
すべてに愛しさを感じる。
ここにザビーネがいたら、わたしは躊躇なく抱きしめるだろう。

そして、母ロッティの潔さ。
従順で夫の言うことにはけして逆らわず
家庭の秩序を保ち、良い食事と良い環境を作り出すことしか
興味がないというより、やることがない
それしか使命感がないような母に嫌悪感を持つザビーネだったが
実際は、そうではないことに気づく。

母は母なりにきちんと見て、考えて自分を持ち
ひとりの立派な女性として生きていた。

母が運転中にいちいち指示を出す夫ハインツに言い放つ場面がある。

『ハインツ、今のうちにはっきりと言っておきたいんだけど
 私がハンドルを握っているときは、私が決めますから」

それにつながるもうひとつのセリフがあるが
それは読んで見つけるのも一興だ。


思春期の子どもにも、
そして思春期の子を持つ親にも。
もちろん恋愛中の大人も。
まだ小さい子どもがいる親たちも。

誰もがきっと、この本を魅了するでしょう。

福武書店がもうないなんて、寂しいことです。
この版権はどこにあるのでしょうか。
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by sorita-exlibris | 2011-09-01 22:51 | 中学生以上の本