8月6日に考える
2024年 08月 06日
7月の読書会
先日、定期的に開催される読書会がありました。課題図書は、オランダが舞台となっているコチラ
原題は『THE LEVEL LAND 』『RETURN TOLEVEL LAND』
主人公たちのオルト一家の住む屋敷の呼称がタイトルになっています。
ナチス・ドイツに占領される間近のオランダから占領されるまでと、続編は6年経った終戦後まで。
お医者さんのお父さん、お母さん、5人の子どもたちのオルト一家を通して、オランダに住む人たちや、ドイツから迫害を受けてきたユダヤの子どもがどうこの時期を過ごしていたかもわかります。
戦争というものが、いつか始まるかもしれないという緊迫感はありながらも、都会と片田舎ではその受け止め方の温度差もあること、「はい、はじめます」ということももちろんなく、ある日突然爆撃という音と共に市民は非日常に押し込められ、生きることを脅かされることも‥‥。
勉強会の中で先生が「これは戦争のお話というよりも、オルト一家の子どもたちの成長物語」と話された時、まさにそうだと思いました。
このお話の中では戦争の時代とはいえ、あからさまにそればかりが書かれていません。子どものやりそうなことが多く描かれ、ハラハラさせられたり、ほほえましく思ったり、楽しくさせてくれます。逆にこういったことで大人が読んで痛感するのは、どの時代も子どもは子どもだということです。大人の勝手で、子ども時代を子どもとして過ごすことができないのです。ですが、”戦争”で全てを片付けてはいけない。子どもたちのやることなすことを戦争のせいにせず、自分たちの行動は自分たちで責任を取ることが大切とお母さんが一蹴するシーンは親として学びになるし、子どもたちは読むと励まされるのではないでしょうか。
いつだって、子どもたちが前を向いて歩けるのは自分たちをちゃんと見てくれる大人の存在。児童文学はその在り方を大人には教え、子どもたちには支えになると信じています。
本書は登場人物の一人ひとりが、本当に実在したかのように生き生きと存在している、これが読者を魅了させる大きな理由でしょう。なぜなら、あまりにも存在が大きくなったオルト一家の安否を気遣い、作者のところには”その後”を気にするお手紙が多く届いたことで、私たちも、6年後のオルト一家に出会うことができたのですから。フィクションとは思えない筆致を見る限り、きっと作者の意図を超えたところで、オルト一家が動き出していたに違いありません。
オランダが占領された1940年5月10日から始まったロッテルダム襲撃は僅か4日間で降伏状態にしたにも関わらず、17日まで空爆を止めませんでした。このシーンでは、預かっているユダヤ系ドイツ人のヴェルナーを国外へ逃がす手配をするミープ(5人姉弟の長女)の脱出劇は手に汗握る場面でした。
心に残るのはお母さんの言葉です。
とうとう恐れていたことが現実になり、ドイツ人に負けた、けれどわたしたちの方が強いと話します。
悪いやつが必ず罰せられるとは限らないと息子に言われますが、お母さんは、自分たちが疑っていたらなにもできないこと、信仰をもとうと言います。『人類と正義とに対する信仰を!』と。
作者はこの本を1943年に発行しています。作者のまえがきは必読です。
傷ましい現実がニュースで流れてきます。遠い国で、わたしたちは何もできることはありません。でも、そうでしょうか?一人ひとりが我が事と考え、どういう世の中にしたいか、世の中が多きれば、どういう家族にしたいかを真剣に向き合ってはどうでしょうか。
最近どこでも話しています。自分の半径1mから幸せに。家族だけじゃない、隣り合う人をいつも幸せにと願う心を持てば、その願いは伝染し、争いを考える人が減るでしょう。
最近、わたしがしたんじゃない、ぼくは関係ない、そんな言い訳を口にする子どもを見ると悲しくなります。
自分が落としたおもちゃじゃなくても、気づいたら拾う、その小さな気持ちがいづれ大きな世界平和に繋がるとも思う今日この頃です。
79年前のヒロシマを偲んで
合掌
追記
1500文字まで決めていますが、今日は2000文字。
お許しを。