ゲド戦記5 ドラゴンフライ


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ゲド戦記5 ドラゴンフライ
ゲド戦記6 アースシーの風
アーシュラ・K.ル=グゥイン作
清水眞砂子訳
岩波少年文庫




この春からわたしはゲド戦記漬けだった。
気づけば、明けても暮れても、ゲドやテナー、またはレバンネンやテハヌーのこと
そして、訳者の清水眞砂子さんのことを考えてきた。
というのも、百町森で開催している 『子どもの本を読んで哲学する』に参加をし
ていて、その題材がゲド戦記だからだ。

8月4日(土)がゲド戦記の最終日となる『子どもの本を読んで哲学する』だが、
もういまから寂しくて仕方ない。
先日、『ゲド戦記6 アースシーの風』を読了し、続けてタイトルの『ドラゴン
フライ』を閉じた。いつもならシリーズを読み終えると、もう二度と続きに出会
えない切なさで途方にくれるのだが、このゲド戦記は違った。心のうちに、アー
スシーの島々が生きているように思うのだ。

『ドラゴンフライ』のまえがきに作者のル=グゥインがこう書いている。

************
『帰還』が出版されて七、八年たった頃、私はアースシーを舞台にした物語をまた
書かないか、と言われた。ちょっとのぞいてみると、私が見ていなかった間に、ア
ースシーではいろいろなことが起きていた。もどっていって、「現在」何が起きて
いるのか、見きわめなくては、と私は思った。
(本書p9左から3l〜p10,1lまで)

まず、どんなことが起こるのか、考える。その世界の住人がこちらにむかって話す
ことに耳をかたむけ、彼らが何をするか、観察する。次にそれについて真剣に考え、
誠実にそれを語ろうと努める。そうすれば物語はちゃんと重力を持ち、読む者を納
得させるものになっていく。
(本書p11,6l〜9lまで)


***********

わたしはまえがきのこの部分で、ノックアウトをされていた。
そして読み終えても、なお続くこの想いは重力を持って、納得させられているのだと
いうことも実感している。


さて、偶然に読む順番はゲド戦記の6、そして5となったのだが、これはこれで、結
果的にはよかったと思っている。
5の『ドラゴンフライ』は短編集になっている。この5つの短編の中で、どれかひと
つを選べと言われたら、、、、。とても困る。
しかし、自分の知っている人の過去に出会えることは嬉しい。例えば『地の骨』。
これは若かりし頃のオジオンの話。
あの誰もが知りたかったであろう大地震の話だ。でもここでは『カワウソ』を書こう。

『カワウソ』の中ではメドラとモエサシのモモのシーンが好きだ。
好きな箇所はたくさんあるが、ここは敢えて、ロークの学院について始めて語られて
いる部分を紹介しよう。

モエサシは強い力を持っているにも関わらず、ロークの自由はよその人々をも自由に
してこそ成り立つと信じてから、なお一層あれこれと考えるようになった。
「どうやったらわたしたちは魔法が教えられるの、魔法が何もかもわかっていないのに。」
この謙虚な言葉はどこから生まれるのだろうと読んでいて驚いたぐらいだ。
でも驚くわたしは読み手としての謙虚さが足りないことに気づいた。
その後の文中で、魔法の真の術とは何か、それがどこでおかしくなっているのか、やはり
ここでも『均衡』を問われている。
ゲド戦記を読んでいてすごと思うのは、まず“つながる”部分だと思う。
それは当然のことだろうと、いま思った人は、まずゲド戦記を6冊読んでほしい。
作者が言うように、少し見ない間に物語は動いていて、おなじことのようになっていない
変化している部分もあるかもしれないが、文中の中で、意味となす言葉の答えのような
ものが、違う巻で見つかったりする。

ドキッとした言葉を最後に紹介しよう。
これは『アースシーの風』の中での、オーム・アイリアンの言葉。
「『欲は太陽までを消す』って、これ、カレシンのことばなの。」

それと同書でのハイタカの言葉
「わたしたちはいつも選ばなくてはならないが、動物はただ必要な状態に身を置き、必要な
ことをするだけだ。くびきにつながれているのはわたしたちで、動物たちは自由なんだよ。
だから動物といると、少しばかり自由というものがわかってくる・・・・・。」


この後もカレシンの言葉などで自由について出てくるが、時にわたしたちも『自由』という
単語に出会うと勘違いをすることがある。 わたしもかつて勘違いをしていた一人だ。
辞書でひとつずつ意味を拾ってみても、『自』は自分自身のことある。『由』はわけ、や事情。
とある。あと手段や手だてとも。これから察しても、けしてこの言葉は好き勝手な意味を成し
てない。『自由』で調べても一番目にくるのは『思い(心)のままとある。

ゲド戦記は、ただの物語ではない、わたしたちに世界の均衡を教えてくれる。
そして、男と女の細やかな違い、または機微を教えてくれる。子どもの気持ちも教えてくれる。
何回読んでも出会いと発見があり、生きる喜びに満ちあふれた本であることに間違いない。





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by sorita-exlibris | 2018-08-03 15:34 | 魔女、魔法 | Trackback | Comments(0)

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