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よあけ

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よあけ
ユリ―・シュルヴィッツ 作・画
瀬田 貞二 訳
福音館書店


息子が4,5歳の時に初めて出会った『よあけ』
一緒に読んだ時も、じぃと見つめて、その後も何回も
読んでとせがまれた絵本です。

子どもたちの通ったシュタイナー園では、水彩画のにじみ絵を描く時間があります。
絵本のラスト近くの日の出の美しさはまさににじみ絵のよう。
綺麗だね、綺麗だねと言ってました。

この本を買うちょうど一年ほど前の2003年の5月、乗鞍スカイラインの
マイカー規制が始まりました。
その始まる直前に、わたしたちはマイカーで出かけ、車中泊をし、
翌朝、御来光を家族4人(当時は4人)で楽しみました。

息子はその時の煌々とした御来光を覚えていて、
絵本を見た時に、お山の太陽が出てくる時みたい、と言いました。

それから数年後、北海道の湖のあるキャンプ場に泊まった時も、
朝早くボートを借りて湖に出た時に、
彼は同じような景色に遭遇したようで、帰ってきた時に、『よあけ』のようだった
と話してくれました。


懐かしく引っ張ってきたのは、今日の勉強会のテーマが『瀬田貞二』だったからです。

静かな湖畔を、朝日が昇る前に、孫と一緒に舟にのりオールを漕いでいくと
朝日が現れ、山と湖がみどりになった。

とてもシンプルで、静謐な情景を見事なまでの言葉と
シュルヴィッツの絵で、確かな存在感を放っています。

ラストの絵は、文庫でも、全ての子がしばし見とれ、
言葉を飲み込むほどです。


後ろの短い紹介には、唐の詩人柳 宗元の詩『漁翁』からモチーフにして
生まれた絵本だとあります。

そこでこちらの出番です。

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鑑賞 中国の古典 19
唐詩三百首
深澤 一幸
角川書店




唐の時代は最も詩がすぐれた時代と言われています。
唐詩三百首と、選ばれたものがありますが、その中に柳 宗元のは5首あります。
その一つが、この絵本のモチーフとなった『漁翁』

宗元は、政治改革運動に参加しますが、支持していた王の失脚により左遷されました。
この詩は、宗元が永州に左遷されたときにうたったものですが、
同時期の作品『江雪』と同じ心象風景が絶妙な言葉で描かれた作品です。

魚翁夜傍西巖宿
曉汲清湘燃楚竹
煙銷日出不見人
欸乃一聲山水綠
迴看天際下中流
巖上無心雲相逐

漁師をしている翁は、夜は西の岩の傍で寝ている。
明け方近くに、清らかな水を汲み 楚竹で火を起こした。
煙は消え、日が昇り始めたが、人影はない。
艪を漕ぐ音しかしない中、山も湖も緑になりはじめた。
天の際から流れでるような湖を見返しても
岩の上から雲だけが向き合っているだけ。

わたしの、まったくな素人訳なので、ご容赦を...。

絵本は、五句と六句は描かれていないのと、登場しない孫がいるだけで、
言葉少ないこの絵本に、たくさんの想像の余地を与えている。


角川書店の『中国の古典19』の深澤一幸氏の解釈では
同時期に書かれた『江雪』は白い静寂の中の孤翁とあるが、
『漁翁』ではさしずめ”緑の静寂の中の孤翁”だろうか。

『「漁翁は夜西岸に傍いて宿り、暁に清湘を汲みて楚竹を燃やす」
とうたうそれと共通し、また詩人自身の傲岸孤高の精神を投影したものといえる』
(本書 p253~254)
漁の翁のイメージはどちらも同じだと筆者は書いている。
他にも『渓居』という隠遁生活をうたったものを読んでいると
ここにも静寂があり、舟を漕ぐ柳宗元の姿がある。


ユリ―・シュルヴィッツは、ポーランドのワルシャワに生まれ、
第二次世界大戦を経験し、1959年にアメリカに渡っています。
唐詩に出会うシュルヴィッツ。そしてそこから『漁翁』を選び
絵本にしたその才覚というか嗅覚は素晴らしいです。

さらに、元のままではなく、シュルヴィッツが孤独な翁に孫を共に
したことに、わたしは一番心が痺れました。

すぐにはわからなくても、もしかしたら、子ども時代に出会って、
もう一度奥付を読み直した”もと子ども”が、唐詩に出会い、
新たな世界を広げていくかもしれません。

改めて、絵本ってすごいですね。
本当なら間近で見ることのない、素晴らしい画家やイラストレーターが
描いた絵を、思う存分、しかも好きな場所で、自分が満足するまで、
いつまでも眺めていられます。

美しく心に響く言葉も大事ですが、絵も切っても切り離せない
大切なものだと考えています。
言葉も絵も、納得のいく絵本は長く愛されているように思いませんか。


キャンプにしばらく行けていません。
森の中の朝日や自然が目覚めていく様子を感じに出かけたいです。



by sorita-exlibris | 2021-09-08 23:41 | 美しい絵本・本 | Trackback | Comments(0)

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